十字穴とすり割りについて
「凹み」や「くぼみ」を英語ではリセス(recess)と言い、ネジ部品では、【十字穴】や【六角穴】などのことを指します。
この凹んだ部分に工具を合わせて回転力を与えることで、ネジに推進力をもたせるのがリセスの役割です。
十字穴や六角穴の他には、【すり割り】や、6個の突起がある星型の【ヘキサロビューラ(6ロブ)】があり、参考までに生まれた順に並べると、次のようになります。
【すり割り】→【十字穴】→【六角穴】→【ヘキサロビューラ(6ロブ)】
すり割りは、リセスの底が水平で使う工具も先端は水平になる場合がほとんどなので、水平どうしをきっちり当てないと回しにくかったり、すり割り部分が潰れて(なめて)しまったりすることがあります。
その問題を解決したのが十字穴で、リセスの底はすり鉢のような形で、工具は錐のような形のものがほとんどで、リセスと工具はすり割りよりも合わせやすく、回しやすいので、作業性でいうと十字穴のほうが優れています。
そのため、締結にかかるコストは十字穴のほうが抑えることが出来ます。
作業性以外に作り方も比較すると、すり割りのネジを作る場合、その多くはすり割り部分を“削って”作るのに対して、十字穴は“型で押して”作ります。
削るということは削りカスが出るため、そのぶん材料のロスが出ますが、型で押して作る場合には材料のロスはほぼありません。
そのため、材料代も抑えることが出来ます。
また、どちらが作るスピードが速いかというと、この場合は型で作るほうに軍配が上がります。
もちろん、作るスピードが速くなればなるほど、製造にかかるコストを抑えることができます。
というわけで、十字穴を使うことで、作業性においても、材料代においても、作り方においても、いろんな角度からコストダウンが出来るリセスなのです。
今回は以上です。
ところで、もともとは商品名に由来するシャープペンシルはメカニカルペンシルの代名詞で、最近ではフリクションボールが消せるボールペンの代名詞として定着しているようです。
ネジ業界にもこのような例があって、十字穴はフィリップスという会社が発明したため、今でも十字穴のことをフィリップス型と呼んでいるのを見かけることがあります。
次回もお楽しみに!