ねじを締めたり外したりする際に発生する摩擦熱によって、ねじが膨張し、おねじとめねじが凝着(ぎょうちゃく)して動かなくなる現象を「焼き付き」と言います。
焼き付きは「カジリ」とも言い、特にステンレス鋼は焼き付きやすい性質を持っています。
これは、ステンレス鋼が持つ性質上のもので、原因は「熱伝導率が低いため」と、「熱膨張率が高いため」です。
熱伝導率について
例えばある物体において場所というか部位によって温度差があれば、熱って高いほうから低いほうへ流れます。
これを熱伝導といい、熱伝導率とは熱の移動のしやすさのことをいいます。
そして、熱伝導率が低いということは、熱が移動しにくい、つまり、その物体が持っている熱が下がりにくい、ということになります。
ねじ締結でいうと、ねじを締めるときには、おねじとめねじが接するので、そこで摩擦熱が発生します。
そこで熱伝導率が低ければ、そのとき発生した摩擦熱が下がりにくいのです。
また、ステンレス鋼は、炭素鋼と比べて摩擦係数が高く、つまり滑りにくいため、そもそもねじ締めのときには摩擦熱が発生しやすい材料なのです。
では、ステンレス鋼はどれぐらい熱伝導率が低いかというと、炭素鋼のおよそ1/3なので、ステンレス鋼はそれだけ熱が移動しにくい、つまり下がりにくいというわけです。
熱膨張率について
ある物体を熱したりして温度が上がったときに、その物体の体積が膨らんだり、長さが長くなったりすることを熱膨張といい、熱膨張の度合いを表わしたものを熱膨張率、または熱膨張係数、もしくは線膨張係数といいます。
ステンレス鋼の場合、この熱膨張率が高く、炭素鋼のおよそ1.5倍です。
ステンレス鋼は炭素鋼と比べて熱によって膨らみやすい材料というわけです。
熱によって膨らみやすいということは、ねじを締めるときにおねじとめねじのスキマがだんだんと少なくなって、熱も持っているので最後は凝着、つまり、くっついて取れなくなるというわけです。
というわけで、もし関西出身のステンレス鋼がいたなら、おそらくこう言うでしょうね。
「オレ、滑りにくい(摩擦係数高い)のに無理やり滑らすもんやから、熱うなったやん!熱うなったら熱いまま(熱伝導率低い)やし、熱うなったらめっちゃ膨らむ(熱膨張率高い)ねん!だから焼き付くねんで!」と。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!