前回のねじの強化書Vol.27では、ねじの焼き付き・かじりの原因は、熱伝導率が低いことと、熱膨張率が高いというステンレス鋼の材料特性が影響しているとお話ししました。
では、ねじ締結そのものでは、どのようなものが焼き付きやすいのか、いくつか例を挙げてみます。
焼き付きやすい締結①
①ねじのグリップ長さ(注1)が長い場合
例えば、六角ボルトと六角ナットの締結では、JIS附属書品のJA六角ナット1種と、ナット高さが高い高ナットでは、高ナットのほうが焼き付きやすくなります。
※附属書品については、ねじの強化書Vol.13、ねじの強化書Vol.14、ねじの強化書Vol.15で書いていますので、よかったら読んでみて下さい。
高ナットの場合、六角ボルトと六角ナットのねじのグリップ長さが長くなるため、そのぶんおねじとめねじが接する面積が大きくなり、より早く、より高い摩擦熱が発生し、その結果として熱膨張が起こり、ねじが焼き付くというわけです。
また、グリップが長いと累積ピッチの誤差(注2)によっておねじとめねじのスキマが少なくなって摩擦が大きくなって焼き付きやすくなります。
では、グリップを短くする、例えば、JIS附属書品のJA六角ナット3種の場合はどうかというと、六角ナットの高さが低くなることによって、ねじの山数が少なくなるため、強度面では不利になりますが、グリップが短くなるぶん、理屈からいうと焼き付きにくくなります。
あと、JIS附属書品のJA六角ナット1種と高ナットのあいだに位置付けられている10割ナット(注3)もあったりしますし、結局のところ、六角ボルトと六角ナットの締結の場合、焼き付きのリスクを考えるならば、どのような高さのナットを使うのかは、ねじの強度とのバランスで選ぶという意識が重要なのではないかと思います。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!
(注1)
ねじでいうと、はめあい長さとか、かん合長さといい、この場合は六角ボルトの座面と六角ボルトに近いほうの六角ナットの座面との距離のことです
(注2)
ねじの谷と谷の距離、いわゆるねじピッチにも一つひとつに当然許容差というか誤差があって、それが積み重なることです。
(注3)
ナットの高さがねじの呼び径と同じもの。
例えば、M10ならナットの高さは10ミリとなります。