前々回のねじの強化書Vol.28と前回のねじの強化書Vol.29では、ねじの焼き付きは主にどういった条件で発生しやすいのか、また、それと対照関係にあることをすれば発生しにくくなるというお話しをしました。
ねじの焼き付き対策として有効なものとは
ねじの焼き付きはねじ部や頭部座面などの接触面で発生するため、ボルトなどの表面の性質を高める処理、つまり何らかの表面処理を施すことはねじの焼き付き対策としては有効です。
表面処理というとねじではめっきや塗装などをイメージすることも多いのですが、ここでの表面処理とはそれだけに限るものではなく、熱を利用するものや表面に物理的な加工を加えたものまで広義の表面処理というか本来の意味での表面処理のことを指しています。
では、どういった表面処理が有効なのかいくつかご紹介します。
潤滑処理
潤滑処理には「液体潤滑」と「固体潤滑」があります。
まず、液体潤滑はオイルやグリースなどの液体潤滑剤を塗布するいわゆる湿式の潤滑処理です。
次に、固体潤滑はフッ素樹脂(PTFE、ポリテトラフルオロエチレン)やグラファイト(黒鉛)、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を塗布もしくは吹き付けるいわゆる乾式の潤滑処理です。
これら液体潤滑処理および固体潤滑処理をねじに施すことでねじ部や頭部座面の摺動性(しゅうどうせい)を高め、摩擦係数を低下させることで摩擦熱の発生を抑えて熱膨張による凝着を抑制する、つまりねじの焼き付きを防ぐことが出来るという仕組みです。
焼き付きのメカニズムについては、ねじの強化書Vol.27に書いていますので、復習も兼ねてもう一度お読みいただければと思います。
流通品のねじでは、ステンレスA2(※A2とはステンレス鋼に適用される鋼種区分のことですが、詳しくは後述します)の六角ナットにはあらかじめフッ素樹脂を利用した潤滑処理を施すことがあります。
イケキンが在庫販売するものであれば、1種タイプの六角ナットM6以上がそれに当てはまります。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!