焼ならし
ボルトやナットなどねじ部品は、塑性加工、それも材料が常温の状態で加工する、
いわゆる冷間圧造で作ることが多いですが、サイズ・形状によっては鋼を熱して塑性加工する
熱間鍛造で作る場合があります。
(冷間圧造についてはねじの強化書Vol.23でお話ししています。)
この熱間鍛造によって鋼の繊維組織が乱れ、その内部には応力、鋼に外力が加わったときに
抵抗する力が鋼の内部に残ってしまいます。
これを「内部応力」とか「残留応力」というのですが、内部応力が残ったまま放置しておくと
時間の経過とともに応力が働いて寸法変化をもたらすことがあります。
この内部応力を低減させるのが「焼ならし」で、これにより鋼の繊維組織を均一にし、
内部に残った応力を除去して寸法変化の発生を抑えます。
また、熱間鍛造後に切削加工といった二次加工がある場合、焼ならしすることで加工性が
良くなります。
では、焼ならしはどのように施すかというと、処理温度としては、「鋼のAc1変態点より上」で、
S45Cの場合800~900℃での処理になります。
そして冷まし方は「急冷(水冷)」です。
ということで、焼ならしをごく簡単にまとめると、
①鋼の繊維組織を均一にする
②内部応力を除去する
③Ac1変態点より上まで熱する
④熱した後は急冷する
⑤切削加工性が上がる
となります。
これらの5つが焼ならしのポイントになります。
焼ならしのお話しをしておいてこんなことを言うのはどうかと思いますが、ねじの強化書Vol.35で
お話しした「焼入れ」、ねじの強化書Vol.36でお話しした「焼戻し」はボルトやナットなどの
ねじ部品において施すことが多いものの、今回の焼ならしについては一般流通しているねじ部品
には施すことはどちらかというと多くはありません。
一般流通しているねじ部品において焼ならしをしているものとなると、イケキンで販売している
製品ではS45Cのアイボルトぐらいです。
ただ、ねじユーザーさんで独自に設計されるねじ部品や、それ以外の部品といった特殊品
においては焼ならしをするよう指示がある図面は頻繁に見かけます。
では、なぜその部品に焼ならしなのか、理由はそれぞれでしょうけど、その理由を想像するのも
一興だと思っています。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!