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ねじの強化書(Vol.38) 焼なましっていつすんねん?

2022.09.20
ねじの強化書

焼なまし

ねじに利用される一般熱処理の4つ目、最後にお話しするのは「焼なまし」です。
ねじの強化書Vol.35でお話しした焼入れや、ねじの強化書Vol.36でお話しした焼戻しは
鋼を硬くしたり強くしたりと、印象でいうとパワーアップ系ですし、ねじの強化書Vol.37でお話しした焼ならしにしても鋼の繊維組織を均一にすることで同じ強度を持たせることが出来るという意味では、どちらかというとパワーアップ系と言えます。

では、今回お話しする「焼なまし」をするとどうなるかというと、鋼が「軟らかく」なります。
軟らかくなると聞くと一見パワーダウン系なのか、とか、鋼が弱くなるのではないか、なぜ硬い鋼をわざわざ軟らかくするのかと思ってしまいそうですが、そうではありません。
柳の枝や釣り竿のごとく、またワンピースのモンキー・D・ルフィのごとく、軟らかいということは変形しやすかったり、変形しても元に戻りやすくなったり、引っ張ったとしても簡単にはちぎれないなどと何かと都合がいいのです。

また、焼なましは焼ならし同様、残留応力を除去することもでき、つまり焼なましは鋼の残留応力を除去しながら軟らかくすることができます。
なぜ鋼の残留応力を除去しながら軟らかくする必要があるのかというと、主にふたつの理由があって、ひとつめは冷間圧造前の段階ですでに鋼の内部には応力が残っているから。
そしてもうひとつは、冷間圧造する際に起こる可能性のある不具合を未然に防止する、というものです。
冷間圧造する際、鋼が硬いことで起こる不具合としては大きく分けてふたつあって、鋼の割れやひびの発生という材料側の不具合と、金型の耐久性の低下、最悪の場合には金型の破損があります。
というわけで、焼なましは線材が出来上がるまでの前工程で発生した影響を一旦リセットして、後工程であるその線材を利用して冷間圧造するときに発生する影響を未然に防いでくれるのです。

ところで、焼なましはどのタイミングで施すことが多いのかというと、ここまでいった後で今さらと思わないこともないですが、冷間圧造する前が多い、ということになります。
焼入れや焼戻し、焼ならしがどちらかというと冷間圧造や転造をした後なので対称的といえますね。
では、焼なましはどのように施すかというと、処理温度としては、「鋼のAc1変態点より下」で、S45Cの場合600~700℃での処理になります。
そして冷まし方は「空冷」、もしくは「徐冷」つまり熱処理炉の中で放置する冷まし方なので、どちらもある程度時間が掛かる冷まし方です。
空冷というと冬のツーリングは良いけど、夏は余計に暑いやん!なんてライダーも多いかもしれませんね。
私は逆ですが。

ということで、焼なましをごく簡単にまとめると、
①鋼を軟らかくする
②内部応力を除去する
③熱するのはAc1変態点以下の温度まで
④熱した後は空冷もしくは徐冷
⑤冷間圧造の時に鋼や金型への負担が少なくなる
となります。

これらの5つが焼なましのポイントになります。
そして、焼なましが終わった鋼を冷間圧造、転造し、そして必要に応じてボルトやナットの強度を上げるために焼入れ・焼戻しを施すということになります。
鋼は「俺ってどんだけ焼かれんねん」と思っていたりしているかもしれませんね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

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