ねじの強化書Vol.43でもお話ししたように、強度区分は数字の組み合わせや数字のみで表すもの、英数字の組み合わせで表わすものがあります。
ねじ締結をする上でおそらく最も多く登場するのが、ボルトや小ねじといった鋼製おねじの強度区分です。
JIS規格では、【3.6】【4.6】【4.8】【5.6】【5.8】【6.8】【8.8】【9.8】【10.9】【12.9】の10段階あります。
鋼製おねじの強度区分は一見すると小数点第1位まで表記したひとつの数字ですが、実はそうではなくて、ふたつの要素が組み合わさって成り立っている数字です。
つまり、【10.9】なら【10】と【9】というふたつの要素で成り立っています。
また、数字と数字のあいだにある【.】には強度区分に直接関連がなく、おそらく数字と数字を区切るためのものと考えられます。
話は逸れますが、ふたつの要素で成り立っているもので思い浮かべてしまうのが『日本酒の味』ですかね。
日本酒を嗜む方々ならボトルなどに記載されている『日本酒度+4.0』や『酸度1.4』といった指標を見たことがあると思います。
もしくは、飲んだことがない日本酒を選ぶ際にこの指標を参考にする方々もおられると思います。
『甘口』とか『辛口』は日本酒に含まれる糖分によって決まり、それを『日本酒度』といいます。
また、『淡麗』とか『濃醇』は日本酒に含まれる酸の量によって決まり、それを『酸度』といいます。
日本酒の味は日本酒度と酸度のこれらふたつの要素で成り立っているというわけです。
前述の『日本酒度+4.0、酸度1.4』はこれに当てはめると『淡麗、辛口』になります。
話をねじに戻すと、ボルトや小ねじなど鋼製おねじの強度区分において、規格にある10段階のものが一般的に流通しているかというとそうではなく、一般的に流通しているのは【4.8】【8.8】【10.9】【12.9】の4段階のみです。
ねじの強化書Vol.13で、ねじにおいては『規格』と『流通』を分けて考える必要があります、とお話ししたように、強度区分も同様、規格と流通を分けて考えなければなりません。
もし一般的に流通していない強度区分のボルトなどを選定してしまうと、そのほとんどで特注品対応となり、コスト面でもリードタイム面でも不利になる可能性が高くなります。
では、ボルトや小ねじにおいてこれら4段階の強度区分のものがすべて流通しているかというとこれまたそうではなく、【4.8】なら小ねじ、【8.8】なら六角ボルト、【10.9】と【12.9】なら六角ボルトと六角穴付きボルトが一般的に流通しているものになります。
併せて言うと、これらは日本においてのみ言えることです。
ところで、今回のタイトルにある【アレと同じちゃうん?】の【ちゃうん?】は標準語でいう【違いますか?】の関西弁ですが、今回は断定的な語気で書いたつもりです。
人が発する言葉って語気によって意味合いに変化が出るので面白いですね。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!