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ねじの強化書(Vol.53) ニッケルは鉄の犠牲にはならへんねん!

2024.02.09
ねじの強化書

前回、ねじの強化書Vol.52でお話ししたように、犠牲防食作用とは亜鉛が犠牲になって錆びてくれて、鉄鋼材料から赤錆を発生させないようにするもので、電気亜鉛めっきにおけるもっとも大きな利点となります。

その反対に犠牲防食作用が起きないめっきもあります。
ニッケルめっきや銅めっき、さらには銀めっきや金めっきですが、イオン化傾向の順番で言うとこれらはすべて鉄(Fe)よりもイオン化傾向が小さいもの、すなわち貴な金属となり、犠牲防食作用が起きません。
その代わりに他にいくつかの特長があって、ニッケルめっきなら耐食性もありながら装飾的にも優れている、銅めっきなら伝導性が良い、金めっきや銀めっきは熱伝導性が良いなどがあります。
熱伝導性が良いということはねじの焼き付き防止にもつながります。

犠牲防食作用が起きないということは、キズなどによって鋼の素地が露出した場合はもちろん赤錆発生に直結します。
特にニッケルめっきについては「ピンホール(小さな穴)」が発生しやすいので十分な対策が必要です。
対策として多く取られるのが「多層化」で、ニッケルめっきを二重三重に施す、種類の異なるめっきを施すといったことが有効です。
種類の異なるめっきとは、例えばニッケルめっきの下地として銅めっき、ニッケルめっきの仕上げとしてクロムめっきなどがあります。
この組み合わせは暗黙の了解というか、セットで施すことがほとんどです。
ここで出てきたクロムはどうかというと、クロムのイオン化傾向は亜鉛と鉄の間に位置するので、鉄よりも卑な金属となるため、犠牲防食作用が起こると考えられますが、そもそもクロム自体が空気中の酸素に触れた時点で酸化しています。
このクロムの酸化被膜は「不動態被膜」という名称でねじの強化書Vol.22でご紹介していますので、併せてお読みいただければと思います。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

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