電気亜鉛めっき(この場合もちろんクロメート処理はセットです)や電気ニッケルめっきといった電気めっきをつける際に注意をしなければいけないのが、「水素脆化(ぜいか)」です。
水素脆性(ぜいせい)ともいいますが、めっきの工程の中で鋼が水素を吸収して内部に空洞が出来てしまい強度が低下するという現象です。
それによりボルトが破断することがあります。
これを「遅れ破壊」といいますが、これが起きるとボルト締結体の破壊につながるので非常に危険です。
鋼である限り電気めっきによる水素脆化は避けて通れないものですが、おねじでは強度区分8.8以上のボルト、めねじではこれに相当するナットでは特に注意が必要です。
となると、このような強度が高いボルトやナットは電気めっきをしなければいいのではとなりますが、そうすると強度が高いボルトやナットを使って組み立てた機械や装置は常にサビの懸念が付きまといます。
また、水素脆化の影響を受けにくい強度区分4.8といった低強度のボルトを使えば良いのでは、となりそうですが、そうなるとボルトサイズが大きくなって締結体そのものも大きく重くなるので、それもすこし考えものです。
では、どうすればいいのかというと、電気めっきによって水素脆化は避けられないとしても、遅れ破壊の発生リスクを抑えることは可能です。
それが加熱法である「ベーキング処理」で、文字通り電気めっきした製品を焼きます。
実際にどれぐらい焼くのかというと、200℃程度で2~4時間です。
それによって水素を遅れ破壊が発生しにくいレベルまで水素をボルトやナットから追い出すことが出来ます。
ただ、ベーキング処理によって遅れ破壊が発生しないレベルになるのはおねじでは強度区分10.9までです。
強度区分12.9となるとそうはいかなくて、いくらベーキング処理をしても遅れ破壊の危険が付きまとうので、例えば強度区分12.9の六角穴付きボルトに三価クロメート電気亜鉛めっきをつけてはいけないのです。
今回は以上です。
次回もお楽しみに!