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技術コラム

ねじの基礎≪6≫ ボルトの成形方法

2025.01.06
ねじの基礎

おねじにはボルト、小ねじ(ビス)、止めねじなど、たくさんの種類があります。
ボルトはそれぞれの用途によってサイズや形状を使い分けますが、同じサイズのボルトでも成形方法によって強さやその生産性が変わってくるのです。
今回は、ボルト頭部とねじ部の成形方法について解説します。

1. 頭部の成形方法

1.1 冷間圧造

「圧造」とは、材料に圧力をかけて塑性変形させる金属の加工方法です。
圧造は加工時の温度によって種類が分かれ、冷間圧造では常温で圧造されます。
金属は常温だと硬いため、成形するためには加工機で大きな力をかけなければなりません。
なお、比較的小さいボルトの頭部に適用されます。

冷間圧造は、ねじの頭部の成形方法の中では最も一般的です。
また、生産性が高いという特徴もあります。
加工時に金属が熱によって膨張しないため、寸法精度は高くなる一方、複雑な形状の成形には不向きです。

金属は常温で塑性変形させると、硬さや引張り強さが増す「加工硬化」をするため、冷間圧造で成形されたボルトはこれらの強度が高くなります。

1.2 熱間圧造

金属の変態点*以上の温度(1000度前後)で圧造する方法です。
加工時に金属が柔らかくなるため、大きな力をかけなくても成形でき、大きなサイズのボルト頭部の成形にも適用可能です。

一方で、冷間圧造で成形されたボルト頭部に比べると寸法精度や硬さが劣ります。
変態点を超えて熱されるために粘りが強くなり、負荷がかかっても破壊されにくいという特徴を持ちます。

*変態点:金属の結晶構造が変化する温度のこと。同じ金属でも特性の変化に合わせていくつかの変態点を持っており、求める特性に応じて使い分ける。

1.3 温間圧造

冷間圧造と熱間圧造の間の温度で圧造される成形方法です。
ボルトの頭部成形では300度〜400度に加熱され、成形に用いられます。

冷間圧造と熱間圧造の利点欠点を補える成形方法で、例えば寸法精度は熱間圧造より高いものの、冷間圧造よりは低くなります。
冷間圧造より複雑な形状に成形でき、熱間圧造より低い温度で成形するため、工具の消耗を抑えることが可能です。

1.4 切削

棒材や線材を削り出して成形する方法で、旋盤やターレットなどで加工します。
幅広いサイズのボルトに適用でき、寸法精度が最も優れた成形方法です。

圧造成形に比べて生産性が劣るものの、複雑かつ多様な形状に対応できます。
また、成形に金型を必要としないため初期コストが安く、品種少量生産や試作品の生産に向いています。

 

2. ねじ部の成形方法

2.1 転造

ねじの外形と谷の径の中間寸法の線材や、棒材を線材や棒材を転がしながら、谷底部を押して凹ませ、山頂部を盛り上がらせることでV字の溝を成形します。
転造ロールやローリングヘッドなどを使って成形し、加工硬化によりねじの硬さが増します。
転造による成形は生産性が高く、切り屑が出ないため、ロスが少なく高精度な量産が可能です。

2.2 切削

ボルトの外形寸法の線材や、棒材にV字の溝を削り取りながら成形する方法です。
専用のねじ切りバイトやねじ切り盤、ターレットなどを使用します。

転造に比べて切り屑が出て歩留りが悪く生産性に劣るものの、複雑かつ多様な形状に対応できることから、多品種少量生産や試作品の生産に向いています。

 

3. まとめ

同じサイズのボルトでも、成形方法によってボルトの強度や生産性が異なります。
頭部の成形方法には「冷間圧造」「熱間圧造」「温間圧造」「切削」の4つがあり、ねじ部の成形方法は「転造」と「切削」の2つです。
それぞれに違った特徴や利点・欠点があるため、事前の確認が欠かせません。
機械設計の際は、用途や形状によって適切なボルトの選定が必要です。
ぜひ資料を参考にしてみてください。

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