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技術コラム

ねじの基礎≪9≫ ナットの種類

2025.03.27
ねじの基礎

材料を締結するねじの中で、めねじに分類されるものを「ナット」と呼びます。ナットは締結したい材料の素材や用途、使用環境などに合わせて寸法や強度、材質や種類を選ぶ必要があります。
今回はナットの「種類」に着目し、解説していきます。

1. 一般的なナット

ここでは、一般的によく使われるナットを紹介します。

六角ナット

六角ナットとは外径が正六角形の形をしたナットのことで、単に「ナット」と呼ぶときはこの六角ナットを指すことが多いです。スパナやモンキーレンチ、ボックスレンチやメガネレンチなどの工具で挟み込んでナットを固定し、反対側のボルトを回して締結します。何度も脱着を繰り返す際は、スパナを使うとナットの角が傷むことがあるので、メガネレンチやボックスレンチを使うのが望ましいです。
成形方法や形状、素材や強度などがJISやISOで幅広く規格化されています。素材は鋼やステンレス鋼、黄銅などといった金属性のものや、硬質塩化ビニールやポリカーボネートなどといった樹脂製のものがあります。一般に耐食性を要する場合はステンレス鋼、耐熱耐摩耗性が求められる場合は合金鋼のものが使われます。
締結部の陥没や損傷、緩みを防止するため、締結する材料との間に座金(ワッシャー)を挟むのが一般的です。緩み止めのため、ナットを閉めた後にさらに別のナットを使って締める「ダブルナット」で締結することもあります。

板ナット

薄い板状のナットのことで、外径は四角形のものが多いです。締結する材料に板ナットがぴったり入るような溝を作ってナットを嵌め込めば、締結時にナットを固定する必要がなくなるため作業性が向上します。
六角ナットに比べて薄いため、軽量・省スペース化を図れます。一方で強度が劣るため、強い締結を必要としない精密機器や家具・家電などで使われることが多いです。

2. 締結する材料に埋め込むナット

ここではナット内側のねじ山だけでなく、外側にも加工を施して締結したい材料に直接埋め込めるナットについて紹介します。
埋め込み式のナットは、ボルト締結時にナットを保持する必要がなくなり、作業性の向上や省スペース化を図れ、締結した際の見た目がすっきり仕上がるといった特徴があります。

鬼目ナット

木材に埋め込んで使用するナットのことで、ナットの外側に加工されたスパイラル状の溝を木材に食い込ませることで強固に固定します。ハンマーで打ち込むか、六角レンチなどでねじ込むことでナットを木材に埋め込みます。
木ねじで母材にタッピング加工しながら締結する場合は、一度取り外すと同じ場所に締結できなくなりますが、鬼目ナットを使えば材料を傷つけずに同じ場所での脱着を繰り返すことができます。このため、組み立てが前提の家具などに使われることが多いです。

インサートナット

締結する材料にインサート(挿入)して埋め込むナットのことで、プラスチック材に使われます。インサートナットを埋め込むことで、柔らかいプラスチック材を摩耗させずに高い締結力を持たせることができ、また脱着を繰り返せます。
インサートナットは締結する材料にドリルで穴を開けて圧入するものが多く、ナットの外側に施されたローレット加工による溝でしっかりと材料に食い込ませます。常温でポンチを使って圧入する、熱源を使ってプラスチックを柔らかく変形させてから圧入するなど、圧入方法も種類があります。
身近な物だと携帯電話やゲーム機、家電製品や自動車の内装に使われています。

エンザートナット

インサートナットの内、金属部品に埋め込んで使うナットをエンザートナットと呼びます。ナットの内側、外側にねじ山が切られており、埋め込む材料に下穴を開け、タッピング加工を施してからエンザートナットを回して締め付けて埋め込みます。
アルミ合金などは、タッピング加工をして直接ボルトを取り付けるとねじ山が潰れやすいため、エンザートナットが使われることが多いです。

ここで紹介したナット以外にも、埋め込み式のナットは各ねじメーカーが多種多様なものを取り扱っているので、締結したい部品の特性や使用環境に応じて選定してください。

3. 緩み止め機能付きのナット

ボルトとナットを使って材料を締結しても、振動や衝撃などで徐々に緩んでくることがあるので緩みを防止する工夫が必要となります。ボルトとナットの他にバネ座金などを使って緩み止め対策を施すことが多いですが、ナット自体に緩み止め機能がついたものもあります。
ここでは緩み止め機能がついたナットについて主なものを紹介しましょう。

座金付き戻り止めナット

その名の通り座金が組み込まれて一体化したナットのことで、座金の弾性効果により緩み止めの機能を有しています。ナットと座金が一体化しているので、作業性の向上や座金の脱着防止を図れます。
締結部の圧力を均等に分散するためのフランジ(広がった部分)を取り付けた座金付きフランジナットなど、多種多様な座金が組み込まれており、その種類は豊富です。

プリべリングトルク形ナット

プリべリングトルクとは、軸力によっておねじとめねじに発生する摩擦トルクのことで、この摩擦トルクを発生させる機構を持つナットのことをプリべリングトルク形ナットと言います。
ねじに外力が加わって回転してしまうのを摩擦トルクで抑えることで、締結後の緩みを防止します。
一言でプリべリングトルク形ナットと言っても様々な形状や種類があり、エンジンなどの振動が加わる航空機や自動車、重機などに使われることが多いです。

ここで紹介したナット以外にも、緩み止め機能がついたナットは様々な種類があります。各ねじメーカーのカタログを参考に、締結したい部品の使用環境や寸法などに応じて適切なものを選ぶようにしてください。

4. 特殊用途向けナット

ここでは、特殊用途向けに作られたナットについて解説します。

プレスナット

主に薄い金属板にプレス、またはハンマーで取り付けるナットのことで、ナット底部の突起を金属板に食いこませることで強力に固着します。締結時にナットを保持する必要がないため作業性の向上を図れます。
金属板に固着させるナットは他にも溶接ナットがありますが、プレスナットだと溶接ナットに比べて固着部の強度は劣りますが安価に取り付けでき、溶接に適さないアルミニウムやステンレス製の金属板にも適用できます。
自動車のボディや機械装置、家電などに使われています。

高ナット

高ナットは、その名の通り通常のナットと比べて高さが高いナットのことです。この形状により、通常のナットに比べてボルトを深く締め込むため、ねじ山が保持し合う面積が増えることで強力に締結できます。このため、鉄骨や棟梁、自動車の車体や重機など長いボルトを使ってしっかり締結する場面で使われることが多いです。
また、ボルトの高さ調整をすることができるので継手ボルトと一緒に使われることもあります。

5. まとめ

今回はナットの種類を、その機能に分けて解説しました。
ここで紹介したナット以外にも、工具を使わず手で締結できる蝶ナットや、締結後にナットの露出部分で怪我をしない・勝手に脱着できないような形状になった袋ナット、ねじの基礎<<8>>で解説したアイボルトと対になるアイナットなど、様々な種類のものがあります。
イケキンは幅広い種類のナットを取り扱っているほか、「ねじ」のエキスパートが適切な締結方法・部品について実証実験を交えた提案もできるので、ナット選定について行き詰まった際は、気軽に相談してください。

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