ねじは公差範囲の違いにより等級が存在します。
この等級の規格ですが、実は旧規格が現場では根強く残っているために、製品受け入れ時にトラブルに発展するケースがあります。
また、自社の検査基準や管理ゲージを確認し最新の情報にアップデートしておかないと、ねじの品質において整合性が取れない可能性があります。
このコラムでは新旧のねじ等級の違いや、入り混じってしまっている背景について解説していきます。
ねじの基本(基準寸法)の表をまとめた資料もご用意しておりますので、ぜひ手元に置いてご活用ください。
ねじ等級 旧規格と新規格の違い
ねじ公差域について、旧規格ではねじ等級が1級(上)、2級(中)、3級(並)とされています。
新規格はおねじとめねじで分かれており
おねじ 4h≒1級、6g≒2級、8g≒3級
めねじ 5H≒1級、6H≒2級、7H≒3級
となっております。
サイズによって管理箇所公差が違うものが存在するため、≒となっています。
旧規格と新規格が入り混じっている背景
日本国内では、元々おねじ・めねじ共に1級・2級・3級という等級管理をされていましたが、1965年に国際規格であるISOねじが導入され日本工業規格(JIS)に標準化されました。
もう50年以上も前に導入された規格なのですが、未だに旧規格が現場には残っているのです。
過渡期に設計された製品図面の公差を更新するのを忘れたままだったり、新しい公差範囲と大きな差がないためにゲージを更新するのが手間で旧規格のままにしていたりという話を聞くことがあります。
ねじ等級の違いによって引き起こされるトラブル
ねじ等級の管理箇所は、めねじ/内径と有効径、おねじ/外径と有効径と当然ながら異なります。
また測定方法としてはめねじはプラグゲージを、おねじはリングゲージや画像寸法測定器を用います。
トラブルになり得る場合としては、以下のようなことが考えられます。
・ねじゲージ検査時にねじ等級の規格差(6g/2級、6H/2級など)によるゲージ嵌合不良(止りゲージが止まらないなど)
・おねじとめねじでねじ等級規格に相違が発生する(例えば、おねじは2級管理、めねじは6H管理)
以前イケキンとお客様の間でも、こういったトラブルがありました。
その時お客様からは「御社から納入された製品がゲージ検査で公差範囲を逸脱している。今すぐ作り直して今日中に納品してほしい。」と言われ、すぐに担当営業と品質管理部門責任者が現場に向かい、現物やゲージの確認をさせていただきました。
確認の結果、イケキンは新規格で検査していたがお客様先では旧規格で検査されていたことが原因だと判明しました。
契約時の条件として、イケキンからは「おねじは6g/めねじは6H管理とする」という内容をお伝えしていたのですが、そもそもお客様は新旧の等級の違いをご存じでなかったようです。
お客様からは勘違いをしていたとお詫びの言葉を頂戴しましたが、ご納得いただく製品が納入出来て一安心でした。
当日に製作品を数万本用意する…となると、至難の業ですから。
後に分かりますが、組織的にねじ公差域クラスに関する情報が更新されていなかったようで、設計・購買・品質部門それぞれのご担当者様は皆様、古い2級管理が現在も生きていると思われていました。
ねじ締結において重要な「公差管理」を正しく行うために
目的に応じたねじ公差域クラスを選択することで安心した締結が実現できます。
皆様も自社内に古い図面が残っていないか、管理ゲージは最新のものに変更されているか、ご確認いただいてはいかがでしょうか。
特にご自身が入社される前からずっと流動している図面品などは、古いねじ等級指定のままだったり、ねじ等級は更新しているものの、暗黙の了解として古いねじ公差範囲となるよう”図面に残らない指示”としてまかり通っていたりすることがあるようです。
今回ご用意してる資料には、設計時・検査時に使えるねじの基準寸法表をまとめております。
品質管理部門以外の、設計・開発部門や調達部門の方もぜひご確認ください。