2021年ごろからステンレス材の価格が急激に値上がりし、2023年に入って落ち着きつつあるものの、高止まりした状態で以前のような価格でステンレスのねじを購入することができなくなりました。
鋼製品など他の材料や、梱包資材、輸送費なども値上がりし、日本の企業のほとんどがコストの問題を抱えているのではないでしょうか。
イケキンも各メーカー様から値上がりのご連絡を受け、ユーザー様との調整に奔走したり、ねじ使用現場の省人化・省力化でトータルコストを抑えるご提案をしたり、日々コストの問題と向き合っております。
このコラムでご紹介する「ステンめっき」は、ステンレスと同等の耐食性を発揮するめっきで、ステンレスのねじよりもコストダウンが期待できます。
ステンめっきのメリット、デメリットを解説いたしますので、ステンレスねじをご使用されている方はコストダウンのための手段として、ぜひご検討ください。
ステンめっきとは
亜鉛ニッケル合金めっきの上に三価クロメート、さらにその上にZECコート(※)を施すめっきです。
自動車関連では20年以上前から採用されている合金めっき方法で、現在は弱電、建築用のねじや、タッピンねじにも対応しています。
※…ZECコートは完全クロムフリーのトップコートで、亜鉛めっきや亜鉛系合金めっきの耐食性を大幅に向上させる機能を持っています。
膜厚が1~2μm程度で性能を発揮するため、製品の外観や機能を邪魔しません。
ステンレスねじと同等の耐食性
ステンめっきを施したねじに塩水噴霧試験を実施したところ、白錆発生まで300時間以上、赤錆発生まで2,000時間以上という結果でした。
これはステンレス(SUS410)のねじと同等の耐食性を示しています。
ステンレスねじよりもコストダウン可能
ねじの単価は数量、サイズ、形状によって異なるため一概には言い切れませんが、基本的にはステンレスねじよりもステンめっきのねじのほうが安価です。
イケキンでねじ、ナットで複数サイズの単価を比較したところ、20~30%ほどステンめっきのほうが安価という結果でした。
ねじ単体でのコストダウンが可能ですので、仕様上問題がなければステンレスねじからの変更を検討してみてはいかがでしょうか。
耐損傷性・耐摩耗性が高い
被膜硬度が高いため、耐損傷性・耐摩耗性が高いこともステンめっきのメリットです。
高耐食性を求めて被膜の厚い塗装系表面処理を使用すると、締め付け時に塗膜が削れて粉が出たりすることがあります。
ステンめっきは3~5μmの薄い皮膜でも十分な性能を発揮し、キズや剥がれに強いので上記のような問題も解決できます。
食品機械や医療機器への使用はNG
ステンめっきのねじはステンレスのねじと同等の性能を持つと説明してきましたが、全く同じように使用することが出来るわけではありません。
食品機械や医療機器などは、人体へ影響する可能性があるためめっきをつけた部品は一切使うことが出来ません。
ステンめっきがいくら剥がれに強くても目に見えない小さな剥がれが生じることはあるため、製造している食品などに剥がれためっき膜が混入してしまうと、取り返しがつかないことになってしまうかもしれないためです。
まとめ
上記でご紹介した以外にも、耐候性が高い、半田付け性に優れる、電流効率が良いなど、ステンめっきのメリットはたくさんあります。
とはいえ最後にお伝えしたように、使用できない製品や環境もございます。
コストダウンでステンめっきをご検討の際は、まずは一度ご相談ください。