こんにちは、りびぃです。
生産設備を設計する中で、特にセンサは自動機を構成する上での重要な役割を果たしています。
センサは対象物から特定の情報を読み取り、それをPLC(Programmable Logic Controller)や各機器のコントローラなどに伝えることによって高度な動作をさせることができます。
私の経験上、センサの中でも特に光電センサは、その幅広い用途ゆえに使用頻度は非常に高いです。
光電センサとは、センサから出た光を使って「物体の有無」などを検知することができる非接触式センサです。
他にも物体の有無を検知できるセンサはありますが「ある程度狙った場所で検知させられる」という点で比較的優位です。
街中でも、
- 自動ドア:人が近づいたことを検知
- 自動で動くエスカレータ:人が通過したことを検知
- 自販機、ATM:カード・現金などの取り忘れがないかを検知
などのように多くの場所で見かけることができます。
また、労働人口の現象やDX推進の流れから、より高度に設備の状態を把握したり制御できるようにするために、年々装置内に導入されるセンサの数が増加傾向にあるなと感じています。
そのため、光電センサの特徴を理解したうえで、お客様の抱えている課題に対して提案したり、うまく設計として取り入れられるようになることは、機械の仕事に関わる方々にとっては必須項目であるとも言えます。
しかし、光電センサと一口に言ってもその種類が豊富である上に、表面的な知識ばかりであることが多いため、理解をしようとしても困惑するという方は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、現役の機械設計エンジニアである私の経験に基づき、各光電センサの特徴や種類とともに、それらの選定のポイントについて、わかりやすく解説していきます。
なお本記事では「汎用的な光電センサ」を想定して解説しています。
資料によっては「ファイバ型」「レーザー型」のセンサも光電センサの一種だと分類していますが、これらのセンサは汎用的な光電センサと大きく特性が異なりますので、本記事では除外して解説していくこと、ご承知おきください。
光電センサの種類と特徴
各光電センサと、それぞれの特徴についてまとめると以下のとおりです。
透過型 | 回帰反射型 | 拡散型 | |
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メリット |
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デメリット |
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では、詳細の説明に入っていきます。
透過型
透過型の光電センサの最大の特徴は、光を投光する「投光器」と、その光を受け取る「受光器」が別々の機器になっている、2つ1組の構成という点です。
この投光器と受光器の間を通っている光が検出対象物によって遮られることで、物体の有無をセンサが検知します。
私の経験上ですが、生産設備の設計においては、おそらくこの透過型が最も選定する頻度が高いです。
この透過型を選定するメリットは主に2つあります。
1つ目は「検出の安定性が高い」という点です。
「受光器への光が遮られさえすれば反応する」という特性であることから、検出対象物の色、材質、表面状態、姿勢や向きなどにほとんど影響されずセンサとして機能することができます。検出対象物が多品種の場合でも問題なく機能することが多いです。
2つ目は「検出距離が長い」という点です。
同じようなサイズのもので他の方式の光電センサに比べると、検出可能距離が10~100倍オーダで長いです。標準サイズの透過型であれば、投光器と受光器が数十m離れていたとしても機能します。
一方で透過型には注意すべき点が2つあります。
1つ目は「2箇所へ配線が必要」であることです。
省配線が求められるような箇所には採用しづらくなります。またもし皆さんが設計者であれば、投光器・受光器両方への配線ルートをしっかり検討しておく必要があります。
2つ目は「軸合わせがシビアな場合がある」ことです。
特に投光器と受光器との距離を長く取っている場合、センサの取付け位置がわずかにズレただけで受光できなくなるので、センサ設置時および交換時に細かな調整が求められます。
3つ目は「透明体に弱い」ことです。
透明な検出対象物に光を当てたところで、光を遮るどころかむしろ通してしまうので、受光器が物体の有無を判別するのが難しいのです。
ちなみにですが、センサ本体がコの字になっており投光器・受光器が一体化されているフォトインタラプタ(フォト・マイクロセンサ)を使用すれば、検出対象物が薄いものに限定されるものの、配線・軸合わせに関するデメリットをなくすことができます。
回帰反射型
回帰反射型の光電センサの最大の特徴は、投光器と受光器が一体になった「センサ本体」と、投光器から出た光を反射する「反射板(リフレクタ)」という2つ1組の構成になっている点です。
センサ本体と反射板との間に検出対象物が無い場合、センサ本体から投光された光が反射板で跳ね返り、再びセンサ本体に戻って来ます。
逆に検出対象物がある場合、センサ本体から投光された光が検出対象物にあたることにより、センサ本体に戻ってくる光の量が少なくなります。
この原理によって検出対象物の有無を検知する事ができます。
私の経験上ですが、透過型にすることによるデメリットが大きい箇所で、この回帰反射型を採用することが多いです。
回帰反射型を選定するメリットは主に3つあります。
1つ目は「省配線である」ことです。
配線はセンサ本体の一箇所のみで済むため、配線を通すことが難しい場所に光電センサを配置したい場合に有効です。また配線工数を半減させることができます。
2つ目は「透明体を検知できる場合がある」ことです。
検出対象物が透明だと、検出対象物が無い場合と同様に反射板を経由して光が戻ってきてしまうのですが、光が投光されてから戻ってくるまでの間に、光が2回検出対象物を通過することになります。そのため、受光器が受け取る光の量の減少を検知しやすいのです。
ただし実際に検知したい透明体で機能するかどうかについては、実際に試験をして、センサの取付や設定などを調整してみるのが確実です。
3つ目は「検出距離がある程度長い」です。
透過型ほどではないものの、回帰反射型も十分なほど検出距離が長いです。センサによっては数m程度の検出距離を有するものもございます。
一方で、回帰反射型にも注意すべき点があります。
1つ目は「鏡面体に弱い」ことです。
表面が滑らかであったり光沢があることによって検出対象物が光をよく反射してしまう場合、検出対象物に光を当てても光の量がほとんど減少することなくセンサ本体に戻っていきます。そのため、センサからしてみれば「反射板による反射」なのか「検出対象物による反射」なのかの区別がつかないのです。
ただし偏光フィルタを使用した特殊な回帰反射型センサを使用することで、反射板によって反射された光のみを受光器で受け取ることができます。
2つ目は「反射板までの距離が近すぎると検知できない」ということです。
センサの構造上、センサ内部の投光器と受光器の位置がズレいるのですが、距離が近すぎるとうまく受光器でセンサの光を受け取れないのです(この検知できない範囲を「不感帯」と呼びます)。機種によっては不感帯が数十mmの範囲にもなります。
反射形
反射型の光電センサの最大の特徴は、投光器と受光器が一体になっている「センサ本体」のみで構成されている点です。
検出対象物が無い場合、光は投光されたまま戻ってこないので、それによって物体がないと判断します。
逆にセンサ本体から投光された光が検出対象物に当てて、そのとき反射してセンサ本体へ戻ってきた光を検知することで、物体があることを検知します。
なお詳細は省きますが、反射型はさらに以下のカテゴリーに分類され、それぞれ特有の特徴を有します。
- 拡散反射型:物体の表面状態の違いを検知しやすい方式
- 限定反射型:背景の影響を受けにくい方式
- 距離設定型:センサが反応する距離を設定できる方式
今回の記事では反射型全般の特徴について触れていきます。
反射型を選定するメリットは主に3つあります。
1つ目は「省配線・省スペースである」ことです。
センサ本体のみで検出が可能なため、配線は1本のみで済みます。またセンサ部品用のブラケットもセンサ本体分のみでよいので、透過型や回帰反射型と比べて設置スペースを小さくできます。狭い場所や、対向面に何も取り付けられない場所に適しています。
2つ目は「使い方次第で柔軟な検出ができる」です。
反射型は検出対象物の特性に影響されやすいことから、この特性を利用して、色・材質・表面粗さの違いを検出させることができます。また多品種の検出対象物の違いを検出できることもあります。
一方で、反射型にも注意すべき点があります。
1つ目は「検出距離が短い」ことです。
受光器が検知する光は検出対象物からの反射光頼りで、そもそも受光できる光の量が少ない傾向にあるので、検出対象物までの距離をあまり離せないのです。おおよそ数百mmの検出距離であることが一般的です。特に黒色や光を吸収してしまう材質である場合にはカタログ値よりも検出距離が短くなる、あるいはできないあ場合があります。
2つ目は「検出が安定しにくい」ことです。
反射型は検出対象物の特性に影響されやすいです。例えば同じような検出対象物を検知させようとしても、
- 光に対して検出対象物があたる角度のばらつき
- 表面粗さのばらつきがバラつき
- 色ムラ
- 水分や油分、塵や埃の付着
によって検出が不安定になってしまいます。また、透明体を検知することができない場合もあります。
3つ目は「周囲環境に影響されやすい」ことです。
検出対象物の後ろや周囲の壁に反射しやすい物体がある場合、誤検出を起こす可能性があります。また照明からの光や、その反射光によっても誤検知を起こす可能性があります。
ただし反射型の中にはこの影響を受けにくい方式のものもございます。
私の経験上、反射型はどうしても検出の安定性に不安が残るので、積極的に採用することはないです。
他の方式の光電センサでは条件的に厳しい場合の代案として採用しています。
選定のポイント
検出対象物の特徴を考慮しよう
光電センサを選定するうえで最も重要であると言っても過言でないのが「検出対象物の特徴」です。
どのような特徴を有している際に留意するべきなのかの代表例を上げると、
- 透明体(ガラス、透明ボトルなど)
- 鏡面体(表面が滑らかな金属、光をよく反射する樹脂など)
- 付着物の有無(水分、油分、埃、泥など)
- 色ムラ、色の違い
- 曲面、斜面
- 検出対象物の種類の多さ
- 検出対象物の状態のばらつきの大きさ
などです。場合によっては上記の組み合わせの特徴を有しているものもあります。
こういった特徴を踏まえ、最も適する光電センサを選定するようにしましょう。
もし検出対象物そのものを検知させることが困難な場合は「代わりとなる検出対象物(ドグ)」を使用することも検討にいれてみましょう。
センサの配置・配線を考慮して選ぼう
もう一つ重要なのは「センサの配置・配線の考慮」です。
例えば「作業者がワークを装置内にセットしたことを光電センサで検知させたい」場合、光電センサを作業者の手元付近に配置してしまうと、何かの拍子に作業者の手がセンサ本体にぶつかってしまう可能性があります。
そうするとセンサの光軸がズレたり、センサが故障する原因になりかねません。
こういった場合は作業者と接触しにくい箇所にセンサを配置するために、検出距離が長いものを選択するのが好ましいです。
あるいは、配線を通せる箇所が狭かったり、配線を通すこと自体が難しいケースにおいては「省配線」が非常に重要となってきます。
例えば、非常に奥まった場所にセンサが必要な場合において配線が多い透過型を使用することは、組立性・メンテナンス性も悪化するため好ましくありません。
このような場合は回帰反射型を採用することで、機械のダウンタイムを削減することができます。